「食べた量」と「吸収される量」は違う
成分表に載っているのは、あくまで食品100gに含まれている量です。 それが全部そのまま体に入るわけではありません。とくにミネラルは差が大きく、 同じ「鉄1mg」でも、レバーから摂るのと野菜から摂るのとでは体に取り込まれる量が数倍変わります。
「しっかり食べているのに数値が改善しない」というときは、量ではなく吸収の条件のほうに原因があることが少なくありません。 ここでは、吸収率の目安と、実際の食卓で使える組み合わせを整理します。
主な栄養素の吸収率の目安
| 栄養素 | 吸収率の目安 | 主な条件 |
|---|---|---|
| ヘム鉄(肉・魚の赤身) | 約10〜20% | 他の食品成分の影響を受けにくい |
| 非ヘム鉄(野菜・豆・卵) | 約2〜5% | ビタミンCで上がり、タンニン・フィチン酸で下がる |
| カルシウム | 約25〜30%(成人) | ビタミンDで上がる。成長期はより高い |
| マグネシウム | 約30〜50% | 摂取量が少ないときほど吸収率は上がる |
| 亜鉛 | 約30% | フィチン酸で大きく下がる |
| β-カロテン | 生野菜では低い | 油と加熱で大きく上がる |
吸収率は体の状態(欠乏しているか・年齢・妊娠期かなど)によっても変わるため、あくまで一般的な目安です。 食事摂取基準の推奨量は、こうした吸収率をすでに織り込んだうえで設定されています。
組み合わせ①:非ヘム鉄 × ビタミンC
もっとも効果がはっきりしている組み合わせです。野菜・豆・卵に含まれる非ヘム鉄は、 そのままでは吸収されにくい形をしています。ビタミンCが同じ食事の中にあると吸収されやすい形に変わり、 吸収量が数倍になることが知られています。
| 食品名(食品番号) | 鉄 (mg) | ビタミンC (mg) |
|---|---|---|
| こまつな(葉・生)(06086) | 2.8 | 39 |
| ほうれんそう(葉・通年平均・生)(06267) | 2.0 | 35 |
| だいず(国産・黄大豆・乾)(04023) | 6.8 | 3 |
| 木綿豆腐(04032) | 1.5 | 0 |
| ブロッコリー(花序・生)(06263) | 1.3 | 140 |
| うんしゅうみかん(じょうのう・普通・生)(07027) | 0.2 | 32 |
こまつなやブロッコリーのように鉄とビタミンCを両方持っている食品は、 それ単体で条件がそろっています。一方、大豆や豆腐は鉄はあってもビタミンCがほぼゼロなので、 ブロッコリーやパプリカ、食後のみかんを足すと吸収の条件が整います。
より詳しくは鉄分が多い食品ランキングとビタミンCが多い食品をご覧ください。
🩸 全食品の鉄ランキングを見る →組み合わせ②:カルシウム × ビタミンD
ビタミンDは、腸でカルシウムを取り込むために働く栄養素です。カルシウムをいくら摂っても ビタミンDが足りなければ吸収は伸びません。そしてビタミンDは、食品では魚類ときのこ類にほぼ集中しているという偏りの大きい栄養素です。
| 食品名(食品番号) | カルシウム (mg) | ビタミンD (μg) |
|---|---|---|
| 普通牛乳(13003) | 110 | 0.3 |
| ヨーグルト(全脂無糖)(13025) | 120 | 0.0 |
| まいわし(丸干し)(10052) | 440 | 50.0 |
| しらす干し(微乾燥品)(10055) | 280 | 12.0 |
| しろさけ(生)(10134) | 14 | 32.0 |
| 乾しいたけ(乾)(08013) | 12 | 17.0 |
牛乳やヨーグルトはカルシウム源として優秀ですが、ビタミンDはほとんど含みません。しらす干しや丸干しのように両方を持つ小魚が効率的で、 乳製品中心の人は魚やきのこを別に足すか、日光を浴びる時間を確保する必要があります。 ビタミンDは日光を浴びることで皮膚でもつくられる、食事以外の経路を持つ数少ない栄養素です。
カルシウムが多い食品・ビタミンDが多い食品も参考にしてください。
組み合わせ③:脂溶性ビタミン × 油
ビタミンA・D・E・Kは脂溶性——油に溶ける性質を持つビタミンです。 油と一緒に摂ることで吸収が大きく変わります。とくにβ-カロテン(体内でビタミンAに変わる)は 生のままかじるより、油で炒める・ドレッシングをかけるほうがはるかに効率的です。
| 食品名(食品番号) | β-カロテン当量 (μg) |
|---|---|
| にんじん(根・皮つき・生)(06212) | 8600 |
| パセリ(葉・生)(06239) | 7400 |
| ほうれんそう(葉・通年平均・生)(06267) | 4200 |
| こまつな(葉・生)(06086) | 3100 |
| うんしゅうみかん(じょうのう・普通・生)(07027) | 1000 |
| ブロッコリー(花序・生)(06263) | 900 |
にんじんのきんぴら、ほうれんそうのごま和え、サラダにオイル入りドレッシング—— 伝統的な調理法の多くは、この条件をすでに満たしています。 「油は控えめに」を徹底しすぎると、せっかくの緑黄色野菜が活かしきれないことがあります。
ビタミンAが多い食品・ビタミンEが多い食品・ビタミンKが多い食品もあわせてどうぞ。
吸収を妨げる要因
逆に、吸収を下げる方向に働く成分もあります。神経質になる必要はありませんが、知っておくと役に立ちます。
🍵 タンニン(お茶・コーヒー)
非ヘム鉄と結びついて吸収を下げます。食事中や直後の濃いお茶・コーヒーを、食間にずらすだけで条件は変わります。ヘム鉄への影響は小さいとされています。
🌾 フィチン酸(玄米・豆・種実)
鉄・亜鉛・マグネシウムと結合します。ただしフィチン酸を含む食品は同時にミネラル自体も豊富です。浸水・発酵(納豆・味噌・発酵パン)でその影響は和らぎます。
🥬 シュウ酸(ほうれんそう・たけのこ)
カルシウムと結合します。ゆでこぼしでかなり減らせるため、ほうれんそうは「さっとゆでて水にとる」下処理に意味があります。
⚖️ 鉄とカルシウムの同時大量摂取
サプリメントなどで両方を一度に大量に摂ると互いの吸収を妨げます。通常の食事の範囲ではほとんど問題になりませんが、補助食品を使うなら時間をずらすのが無難です。
発酵によるミネラルの摂りやすさについては発酵食品の栄養比較で扱っています。
献立で考える——条件がそろっている組み合わせ
🍳 こまつなと豚レバーの炒め物
ヘム鉄(豚レバー13.0mg/100g)と非ヘム鉄(こまつな2.8mg/100g)、ビタミンC(こまつな39mg/100g)、そして油。鉄をめぐる条件がひととおり揃います。
🐟 しらす干しと青菜のごま和え
カルシウム280mgとビタミンD12.0μg(しらす干し・微乾燥品)に、ごまの油分が加わります。乳製品に頼らずカルシウムを摂るときの定番です。
🥕 にんじんのきんぴら
β-カロテン当量8600μg/100gのにんじんを油で炒める、というだけで脂溶性ビタミンの条件を満たしています。
🍚 納豆ごはん+みかん
大豆の非ヘム鉄を、発酵でフィチン酸の影響を抑えつつ、食後のみかんのビタミンCで後押しする形。
まとめ
- ✓非ヘム鉄(野菜・豆・卵)にはビタミンCを合わせる。ヘム鉄(肉・魚の赤身)は条件を選ばず吸収されやすい
- ✓カルシウムはビタミンDとセット。乳製品だけではビタミンDが不足しやすいので魚・きのこ・日光で補う
- ✓β-カロテンなど脂溶性ビタミンは油と一緒に。炒め物・ごま和え・オイルドレッシングが理にかなっている
- ✓濃いお茶・コーヒーは食事中を避けて食間へずらす
- ✓フィチン酸・シュウ酸は避けるより、浸水・ゆでこぼし・発酵という下処理で付き合う
- ✓サプリメントで単一のミネラルを大量に摂るときだけ、飲む時間をずらすことを意識する
自分に足りていない栄養素の見当をつけたい場合は日本人に不足しがちな栄養素ランキングから読むのがおすすめです。マグネシウムや亜鉛の個別記事もあります。
参考資料
・文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」
・厚生労働省「日本人の食事摂取基準2020年版」
※ 本記事は一般的な栄養情報であり、疾患の診断・治療を目的としたものではありません。 治療中の方やサプリメントを利用中の方は、医師・管理栄養士にご相談ください。