ナイアシンはエネルギー代謝の「土台」
ナイアシン(ビタミンB3)は、糖質・脂質・たんぱく質をエネルギーに変える反応に関わる水溶性ビタミンです。 体内では NAD・NADP という補酵素の形になり、数百種類の酵素反応を支えています。 皮膚や粘膜の健康、神経の働きにも関わります。
極端に不足するとペラグラという欠乏症を起こすことが知られていますが、 通常の食生活を送っていれば日本ではまれです。魚・肉・きのこに広く含まれ、 さらに後述するとおりたんぱく質からも体内でつくられるため、不足しにくい栄養素と言えます。
推奨量(成人男性)
15 mgNE/日
日本人の食事摂取基準2020年版
推奨量(成人女性)
11 mgNE/日
年齢によって多少前後します
データ比較:ナイアシンが多い食品(可食部100gあたり)
日本食品標準成分表2020年版のナイアシン量が多い食品です。 右列の「ナイアシン当量(NE)」については次の節で説明します。
| 食品名(食品番号) | ナイアシン (mg) | ナイアシン当量 (mgNE) |
|---|---|---|
| まいたけ(乾)(08030) | 64.0 | 69.0 |
| たらこ(焼き)(10203) | 57.0 | 62.0 |
| たらこ(生)(10202) | 50.0 | 54.0 |
| インスタントコーヒー(16046) | 47.0 | 48.0 |
| かつお節(10091) | 45.0 | 61.0 |
| 削り節(10092) | 37.0 | 54.0 |
| らっかせい(大粒種・いり)(05035) | 23.0 | 28.0 |
| びんながまぐろ(生)(10255) | 21.0 | 26.0 |
| 乾しいたけ(乾)(08013) | 19.0 | 23.0 |
| かつお(春獲り・生)(10086) | 19.0 | 24.0 |
出典:日本食品標準成分表2020年版(八訂)。上位には乾物・加工品が並びますが、 これらは水分が抜けて濃縮されているためで、1回に食べる量は数g程度です。
「ナイアシン当量(NE)」とは何か
成分表にはナイアシンとナイアシン当量という よく似た2つの項目が並んでいます。食事摂取基準の推奨量が「mgNE」で書かれているのは後者のほうです。
違いの理由は、ナイアシンが体内でつくれるビタミンだからです。 必須アミノ酸のトリプトファンから、およそ 60:1 の比率でナイアシンが合成されます。 つまりたんぱく質をしっかり食べていれば、その分だけナイアシンも供給されている。 この体内合成分を足したものがナイアシン当量です。
| 食品名(食品番号) | ナイアシン (mg) | ナイアシン当量 (mgNE) | 差 |
|---|---|---|---|
| 鶏卵(全卵・生)(12004) | 0.1 | 3.2 | ×32 |
| ごはん(精白米・うるち米)(01088) | 0.2 | 0.8 | ×4 |
| 鶏むね 皮なし(焼き)(11288) | 18.0 | 27.0 | +9.0 |
| 鶏むね 皮なし(生)(11220) | 12.0 | 17.0 | +5.0 |
| かつお節(10091) | 45.0 | 61.0 | +16.0 |
| 普通牛乳(13003) | 0.1 | 0.9 | ×9 |
極端なのが卵です。ナイアシンそのものは0.1mg/100gとほぼゼロなのに、 ナイアシン当量では3.2mgになります。トリプトファンを豊富に含むためです。 「卵はナイアシンが少ない食品」と読むのは誤りで、NEで見ればれっきとした供給源です。
逆に、ナイアシン当量の側から見ると納得できることもあります。たとえばたんぱく質が多い食品は、ほぼそのままナイアシン当量も高くなります。 ナイアシン単体を追いかけるより、たんぱく質を十分に摂ることのほうが実効性が高いわけです。
日常的な食品で見ると
乾物や加工品を除いた、ふだん食卓に出る食品での比較です。
| 食品名(食品番号) | ナイアシン (mg) | ナイアシン当量 (mgNE) |
|---|---|---|
| かつお(春獲り・生)(10086) | 19.0 | 24.0 |
| くろまぐろ 養殖赤身(生)(10450) | 15.0 | 20.0 |
| 鶏むね 皮なし(生)(11220) | 12.0 | 17.0 |
| まさば(生)(10154) | 12.0 | 16.0 |
| まぐろ缶詰 水煮フレークライト(10260) | 9.5 | 13.0 |
| ぶた もも 脂身つき(生)(11130) | 6.2 | 10.0 |
| まあじ 皮つき(生)(10003) | 5.5 | 9.2 |
| 鶏もも 皮つき(生)(11221) | 4.8 | 8.5 |
かつお1切れ(約80g)でナイアシン当量は約19mgNE——それだけで成人男性の推奨量15mgNEを上回ります。 鶏むね肉100gでも17mgNE。魚か肉をふつうに食べていれば、ナイアシンで悩む場面はほとんどありません。
調理でどう変わるか
- ✓ナイアシンは水溶性。ゆでると煮汁に溶け出すため、汁ごと食べる料理(鍋・汁物・煮込み)が効率的
- ✓一方で熱には比較的強く、加熱そのものによる損失は水溶性ビタミンの中では小さいほう
- ✓かつお節・削り節は数gでもまとまった量になる。だしを取ったあとの節を捨てずに使う「だしがら活用」は理にかなっている
- ✓まいたけは乾燥で64.0mg/100gまで濃縮される。生のまいたけを日光に当てて干すだけでも濃縮効果がある
- ✓サプリメントでの大量摂取(ニコチン酸として)は顔のほてりなどの副作用が知られており、耐容上限量が設定されている。食品からの摂取で問題になることはない
まとめ
- ✓ナイアシンが多い食品はまいたけ(乾)64.0mg・たらこ(焼き)57.0mg・かつお節45.0mg/100g
- ✓推奨量は成人男性15mgNE・女性11mgNE。かつお1切れ(約80g)でほぼ充当できる
- ✓成分表の「ナイアシン当量(NE)」はトリプトファン由来の体内合成分を含む値。食事摂取基準はこちらを基準にしている
- ✓卵はナイアシン0.1mgでもNEは3.2mg。ナイアシン単体の数値だけで判断しない
- ✓水溶性なので汁ごと食べる料理が効率的。熱には比較的強い
- ✓たんぱく質を十分に摂れていれば、ナイアシンを個別に意識する必要はほとんどない
同じB群のビタミンB1・ビタミンB2・ビタミンB6・ビタミンB12の記事もあります。B群はまとめて働くため、単独ではなく全体で足りているかを見るのが実用的です。
⚡ 全食品のビタミンB2ランキングを見る →参考資料
・文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」
・厚生労働省「日本人の食事摂取基準2020年版」
※ 本記事は一般的な栄養情報であり、疾患の診断・治療を目的としたものではありません。